家具 (meubles) |
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アルザスの家具は、基本的に分解可能である。かすがいを用いて組み立ててあるので、大きな家具でも分解して持ち運びができるようになっていた。
1.テーブル (table alsacienne)
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農民の使うテーブルは長方形をしたがっしりしたもので、上板の取り外しが出来るようになっている。上板はたいてい2枚の板を組み合わせて出来ている。引き出しは、一般的には大きなものと小さなものと二つ付いていた。大きな引き出しは、食べかけの丸パンをしまっておくためのものであり、小さな方はナイフやフォークをしまっておくためのものである。アルザスの農民の家では、台所は調理をするためだけのところで、食事は大広間で取ることになっていた。テーブルは、家の中庭と外の様子が見える大広間の隅に置かれ、窓側には備え付けの長いすがあり、その向かい側には椅子が置かれた。写真のテーブルは、18世紀頃のもの。この頃の特徴は、脚が垂直でなくやや外よりに伸びていて、横から見ると台形をしている。また、脚がらせん状に装飾されている。そして、脚を乗せられる板が付いている、ことなどがあげられる。時代が経つと、脚はまっすぐとなり、らせん状の装飾もなくなり、脚を乗せる板も×形になったり、最後にはなくなる。
2.イス (chaise alsacienne)
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イスもまた、背もたれ、座部、脚を組み合わせ、かすがいによってとめられていた。昔は村の職人が各家庭からの注文に応じてイスを作っていたために、「セット販売」という考え方はなかった。そのため、形はまちまちで、高さも座る人に合わせて作られていた。
上の写真のイス(1850年前後)は、形は似ているが高さは異なっており、使う人に合わせ同じ職人が作ったものと考えられる。
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上左の写真は、背もたれの部分を拡大したもの。中央の写真は、座板を拡大したもので、4つの丸い穴は、下からはめ込んである脚の先端部分である。脚の先端部分(写真の丸い部分)には、長方形の切込みが事前に作られていて、座板に脚をはめ込んだ後、この部分に長方形のかすがいをはめ込むことによって、脚の先端部分を広げ、きつくしまるようになっている。右の写真は、イスを下から見たもの。木を組み合わせることでイスが出来ていることがわかる。
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背もたれの装飾は様々である。左の写真の背もたれには、ブレッツェルまたは横向きになった「8の字」があり、永遠性を表している。中央の写真の背もたれには、二人の人物のイニシャルと年号(1817年)が入っていることから、婚礼家具であったことが分かる。右の写真も同様で、さらにハートのマーク、花が装飾されている。IHSは、イエス・キリストを表す言葉である。