ルイ・フィリップ・カム (Louis Philippe KAMM)

 

 アルザスの人々や日常生活の様子を温かいまなざしで見つめ、描き出した。油彩が中心だが、水彩も手がけた。油彩では、記念碑的な大作をいくつもものにしている。

《クーグロッフの試食》

 クーグロフを捧げ持つ女性がいることから、《クーグロフの試食》と名づけられたこの作品は、長さ3メートル、高さ2メートルの大作である(この作品は、さらに大きなダンス場面を描いた絵と、もともと一対になっていた)。画面左手に陣取る老人たちは、いかにもカムらしい温かな眼差しでユーモラスな表情で描き出されている。これに対し、中央でクーグロフを捧げ持つ女性は、スピンドレールの描く人物を想起させるし、右端で一人腰掛けた老人の風貌は、シュトスコフのそれを思わせるものである。人々が囲んでいるテーブルは、17世紀前後のアルザスのものであり、右端の老人の足元に置かれたワイン入りのピッチャーは、ベッチュドルフ村でおもに焼かれている焼き物である点にも注意しておきたい。